はじめに
フグには、テトロドトキシンと呼ばれる猛毒のフグ毒が含まれており、食中毒を引き起こす可能性があります。フグ毒は青酸カリの約1,000倍の毒性を持ち、加熱や水さらしなど通常の調理方法では無毒化や除去することはできません。
フグ毒による中毒症状は食後20分から3時間程度の短時間で現れます。重症の場合には呼吸困難で死亡することがあります。
私は下関出身で、小学生のころまで父がフグ漁師をしていましたので、フグはよく食べていました。そして、フグ毒について若干の思い出もあります。
フグ毒と漁師
若い漁師の死
私がまだ小学生にあがる前だったと思います。1月か2月の寒い朝、外は雪が降っていました。そのとき、母の顔色が青ざめていたので、聞いてみると、若い漁師が船上での食事でフグを食べて亡くなったということでした。
そしてしばらくすると、亡くなった若い漁師が仲間に背負われて、港から漁師町のせまい通路を自宅まで運ばれていきました。私の家の前を通っていったその光景を今でもよく覚えています。
親子漁師
私の父の船には7~8人の乗組員がいました。ほとんどは親戚の人たちで、その中に一組の親子がいました。この親子について、他の漁師が話しているのを聞いたことがあります。
船上では、獲れたフグを刺身や味噌汁にしてよく食べていたようです。そのとき、父親は他の漁師がいくらおいしそうにフグを食べていても、けっして自分の息子には食べさせなかったとのことです。
シロサバフグの肝入り味噌汁
シロサバフグは下関ではカナトフグと呼ばれています。カナトフグはトラフグに比べて身が柔らかく、刺身にした場合食感が劣ります。
ただ、シロサバフグの肝入り味噌汁は私の大好物で、子供のころからよく食べていました。母がフグの調理師免許を持っていて、よく作ってくれました。肝は脂が多く、肝自体のうま味が強く、味噌汁全体も濃厚になります。これに長ネギを刻んで入れて食べるのは最高でした。
しかし、翌日残った味噌汁を温めなおして食べようとすると、脂がギトギトで、脂の酸化臭がありました。
これまでシロサバフグは一般に無毒種とみなされてきましたが、一部の個体の肝臓に弱い毒性が認められました。萩市近海産シロサバフグ肝臓の毒性
シロサバフグやクロサバフグは基本的に食用可能ですが、だからといって素人判断で調理してしまうのは大変危険です。シロサバフグの肝入り味噌汁は私の大好物ではありましたが、今後食べることはないでしょう。
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